4.MBO予想実践

【基幹記事】MBO予想の評価基準やスクリーニング手順の実例

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はじめに

会社が「上場をやめて自分たちだけの会社にしたい!」と思うことがあります。これを実現するのがMBO(マネジメント・バイアウト)という手法です。

これは経営陣の判断によるものですので、どの会社が将来的にMBOを実行するか確実に当てることはできません。これは専門家やプロの投資家でも同様で、もちろん私も同じです。

ただ当ブログではそれでも敢えてMBO予想を試みたいと思います。

この記事では、MBO候補企業を評価するための項目を整理しながら、各評価基準をまとめていきます。

あくまで当ブログ内の個人的予想の範疇であり、将来的なMBOの実現を保証するものではありませんのでご了承ください

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実際に予想した企業に株式投資する際のPandaの心構えとしては、MBO予想が当たればプレミアムがつくことでキャピタルゲインを大きく得られて良し、当たらないうちも長期保有により配当というインカムゲインをついでに得られればそれも良しと考えています。

財務面が強い会社をMBO予想の条件に入れますので、高配当とまではいかずとも安定配当の会社が割と多くMBO予想と配当金の親和性は意外と高いです。

投資イメージを一言でいうと『プレミアム狙い型・オーナー覚醒待ち投資』といったところです。

(MBOが起こらず株価が低調のまま含み損を抱え続けるリスクもゼロではありませんが)

また投資はあくまで生活に影響しない余剰資金、つまり”最悪消えても大丈夫なお金”でおこないましょう

MBO予想のための評価基準

外的要因(経営者が上場を辞めたいと思うネガティブ要因)

まずは、PBRやアクティビストの存在、不祥事の有無など、企業が上場維持にストレスを感じている状況にないかをチェックします。

ポイントどういうこと?どうやってわかる?
株価が低い(PBRが1倍未満)株価が会社の価値より低く、東証から「もっと良くしなさい」と言われている・証券会社のスクリーニングツール
・有価証券報告書
・分析サイト(IR BANKなど)
厳しい株主がいるアクティビストファンドなど、経営に積極的に関与する株主がいる・証券会社等の情報
・大量保有報告書など
最近不祥事や問題があった不正やトラブルにより、東証から「経営をきちんとしなさい」と言われている(ガバナンス問題)・ニュース
・IR情報
東証の上場を維持するための基準をクリアするための計画を公表している基準クリアの意思は示しているものの、維持基準を満たせなくなっていたのは事実である・上場維持基準の適合に向けた計画書

この中で複数該当するほど、経営者が「上場を続けるよりも非上場化したい」と考えてMBOに傾く可能性が高まります。

内部要因(MBOに踏み切ることができる企業体質)

次に、経営者や創業家の持株比率や財務体質を確認します。経営者の支配力や会社の体力みたいなものです。

創業家等による持株比率が高いほどMBO実行時の株式集約が容易になります。また財務体質の健全性は資金調達や買収後の経営安定性に繋がります。

ポイントどういうこと?どうやってわかる?
経営者や創業家の持ち株が多い経営者や創業者が会社の株を20%以上持っている株主の名簿や報告書
財務がしっかりしている黒字、営業CFプラス、時価総額100億円以上、高い自己資本比率決算書や財務資料

経営者がMBOをしたいと考えたとしても、実際に実行できるかどうかは企業内部の要素が大きく影響します。

その他の要因

最後に、上記に挙げていない要因もみていきましょう。

たとえば、近年配当を大幅に減らしている企業や、経営者が株主還元よりも事業再投資を重視している場合、MBOに向けて水面下で動いている可能性があります。

ポイントどういうこと?どうやってわかる?
配当や株主への還元の仕方配当性向が低い、株主優待などに積極的でない配当履歴、有価証券報告書で確認
経営者の考え方や発言経営者が株主や市場にどう答えているか決算説明会やIR資料で確認

この段階では、定量的な指標だけでなく、企業文化や経営哲学なども加味します。

一旦、まとめ

下記は、各段階での評価項目8点を一覧化したものです。

ステップポイント何を調べる?どうやって調べる?
外からのプレッシャー株価が低いPBRが1倍未満か?株価情報、証券会社サイト
外からのプレッシャー厳しい株主(アクティビスト)の存在アクティビストが株主にいるか?株主名簿や報告書
外からのプレッシャー不祥事や不正不正や会社体制のトラブルが最近あったか?ニュース、報告書
外からのプレッシャー上場維持基準からの乖離乖離度や基準クリアに向けた会社の姿勢上場維持基準の適合に向けた計画書
実行力経営者(創業家)の持株比率少なくとも20%以上か株主名簿
実行力財務の健康度黒字、資金の流れ、自己資本比率決算書
特別な事情配当や株主還元株主還元が抑えられているか?配当記録
特別な事情経営者の考え方や決断力過去の発言やIR開示姿勢IR資料

実際のスクリーニング手順(例)

証券会社のスクリーニングツールを利用して会社を絞り込む
  • 市場の種類:東証プライムまたは東証スタンダード
  • PBR:1倍未満
  • 自己資本比率:60%以上
  • 時価総額:100億円前後~1000億円
  • 配当金:あり
STEP1で抽出された会社について、株主構成を1社ずつ確認する
  • 創業家一族または経営陣で合わせた実質的な持株比率:20%以上
STEP2を通過した企業について、その他の条件を1社ずつ確認する
  • 営業利益または経常利益は安定して黒字か?(財務)
  • キャッシュフロー(CF)は安定しているか?(財務)
  • 株主にアクティビストがいるか?(株主構成)
  • 不正や会社体制のトラブルが最近あったか?(ニュース)
  • 上場維持基準からの乖離があるか?(「上場維持基準の適合に向けた計画書」)
  • MBOが起こりやすい業種か?
  • 株価はここ1~2年で大幅に上昇していないか?(チャート)
  • 新規事業や方針転換を考えていそうか?(経営者)
panda
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PandaはSTEP1・2はマストとし、更にSTEP3の財務面が強いことまでは重視しています。

STEP3のその他の項目は該当すれば更にポイントをつけるオプションのような位置づけで考えています。

あとは総合的に見て、経営者の気持ちになり「会社は強いのだから非公開にして後は自分でやる!」と思えたり、資金を出す投資ファンドの立場から「MBOのためにお金を貸そう」と思えるようであれば候補企業とみてよいでしょう

Pandaが保有している銘柄リスト

※リストは同カテゴリーでの個別評価記事の公開に合わせて随時追記

全て保有自体はしていますが、各銘柄への投資額は好み・予想・株価状況に合わせて偏りを持たせています

“プレミアム狙い型・オーナー覚醒待ち投資”に向いている人

冒頭でもコメントした、このMBO予想を踏まえた投資手法の名前は私が独自に付けたものですが、これは以下のようなPandaと似て天邪鬼な方に向いているように思います。

◆入金力が低いうちの高配当株投資では満足できない人

◆日々のチャート変動で一喜一憂するのが面倒な人

◆配当はおまけであり銀行預金に預けておくよりはマシぐらいに思える人

◆MBOやTOBが公式発表された後でその銘柄に飛びつくのはイケてないと思う人

◆たまにロト6とかしたくなる人

◆普通の方法とは違うことをコッソリやりたい人

安全性・確実性から言えばインデックス投資(S&P500、オルカン等)や高配当または連続増配銘柄への株式投資が王道と言えるでしょうし、万人におすすめできるのはそちらだと思います。

ただ、何か人と違ったことができないかな、ちょっと出し抜いてみたいと考える人はやってみると面白いですよ。

まとめ

今回は具体的な評価基準やスクリーニング手順の実例を紹介しました。

スクリーニングや銘柄選びは実際に自分で手を動かして探すことが重要です。自分の基準で「これならばMBOがいつか来るぞ」と仮説が立つ銘柄を見つけられれば、株式をホールドする(ちょっとやそっとの値下がりで手放さない)力が強く保てます。

それに地道に調べたり企業同士を比較することで企業を見る目が少しづつ養われていきますので、当記事で紹介したような評価基準も参考にしつつ、自分が信じる基準を持ってMBO予想または投資判断に活かしていただければと思います。

ABOUT ME
Panda(パンダ)
Panda(パンダ)
公認会計士
監査法人出身の公認会計士。現在は一般事業会社の経理として実務に従事しながら、株式投資やインデックス投資なども実践中。 経理と会計士の視点から、MBO候補企業をゆっくり、でも深く掘り下げるブログを書いています。
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