4.MBO予想実践

【MBO予想】イサム塗料(東証スタンダード・4624)

panda

はじめに

こんにちは、MBO予想ブログのPandaです。
話題のMBO(マネジメント・バイアウト)について、実際の上場企業のうち「MBOの動きがあり得るか」という観点から一定程度評価できるものをご紹介していきます。

評価基準やスクリーニング方法の考え方はこちら

【基幹記事】《実例》MBO予想の評価基準やスクリーニング手順
【基幹記事】《実例》MBO予想の評価基準やスクリーニング手順


今回は、自動車補修用塗料に強みを持つイサム塗料㈱(東証スタンダード・4624)をご紹介します。

あくまで当ブログ内の個人的予想や基準設定の範疇であり、将来的なMBOの実現を保証するものではありませんのでご了承ください

企業概要

自動車補修用塗料や工業用塗料などを手がける独立系の老舗塗料メーカー。創業以来、堅実経営を貫き安定した収益基盤と強固な財務体質を維持。

一方で株価は純資産や実力に比べて低迷しており、市場からは「眠れる優良企業」として再評価の機運も高まっている。アクティビスト投資家からの注目も集まりつつあり、今後の資本政策やガバナンスの動向が注目される。

本社所在地は大阪府。決算月は3月。

評価基準

スコアレンジ

各項目はS~Dの5段階評価です。
目安は以下の通りです(数値は便宜的な点数レンジ)。

評価点数レンジ説明(基準)例
S100~90極めて優秀・業界トップクラス、MBO観点で非常に有利
A89~80優秀・上位水準、MBO観点で有利
B79~70標準的・平均的、MBO観点でやや有利
C69~60やや見劣り、MBO観点でハードルあり
D59以下明確な弱み、MBO観点で大きな障害

各項目の具体的な基準イメージ

  • PBR割安度
    S:0.4倍未満/A:0.4~0.6倍/B:0.6~1.0倍/C:1.0倍超/D:1.5倍超
  • オーナー支配度
    S:過半数超/A:35~50%/B:20~35%/C:5~20%/D:分散株主
  • 自己資本比率
    S:80%超/A:60~80%/B:50~60%/C:40~50%/D:40%未満
  • キャッシュフロー
    S:安定大幅プラス/A:概ねプラスで推移/B:年によって波があるが黒字基調/C:赤字年が目立つ/D:恒常的に赤字
  • 配当性向※
    S:10%未満/A:10~20%/B:20~35%/C:35~50%/D:50%超(※低いほどMBO観点で評価高)
  • 業界リスク
    S:極大/A:大きい/B:やや高い/C:低い/D:皆無
  • 時価総額
    S:100億円未満/A:100~300億円/B:300~600億円/C:600~1500億円/D:1500億円超

MBO予想ステータス(2025年5月時点)

※配当性向は、MBO観点では低いほど高評価としていますのでご注意ください

基本能力の評価

  • PBR割安度(S)
    PBRは0.37倍前後と1倍を大きく下回る水準で、上場企業全体でもトップクラスの割安さ。
  • オーナー支配度(S)
    創業家・経営陣(北村家)の持株比率は約44%、取引先持株会であるイサム塗料栄勇会を含めれば実質的に過半数超を保有する強いオーナー色。
  • 自己資本比率(S)
    自己資本比率は82.4%と非常に高く、有利子負債もほとんどないため、財務の安全性は抜群。
  • キャッシュフロー(B)
    営業キャッシュフローは黒字基調だが、年度によって波がある。
  • 配当性向(B)
    配当性向は20%台と低めであり内部留保を重視した資本政策といえる。株価も高いため配当利回りは1.6~1.7%台と低めに算定される。
  • 業界リスク(C)
    塗料業界は自動車や建設などの景気動向に左右されやすい面はあるものの、極端な構造変化リスクは低い。
  • 時価総額(S)
    時価総額は約60億円と小型で、MBO実行時の資金調達面でのハードルはかなり低い水準。

特殊能力の説明

  • 上場維持基準の適合に向けた計画書(○)
    流通株式比率が上場維持基準の25%に満たない状況が長年続いている。仮に最近クリアできたとしても今後も基準充足の懸念が続く可能性あり。
  • 株価上昇傾向(×)
    株価は10年単位では上昇傾向にあり、MBO目線でいえば買取価格が高めに算定されて会社がMBOに踏み切るのを躊躇う可能性があるためマイナス。

総評

PBRの極端な割安さ、創業家・経営陣による強い支配力、圧倒的な自己資本比率、小型の時価総額はMBOターゲットとして非常に魅力的です。

一方で株価が3,000円を超える水準のため投資時の金額的負担が他の小型株に比べて高めとなるのが投資家が実際に株式を購入する際のハードルです。また配当利回りが低めである点も理解しておくべきではあります。

株価は高いけれどオーナー支配度も高いため、残りの株を買い集めるための経営陣の金銭的負担が抑えられてMBOに向けては追い風になるという考え方もできる…!

流通株式比率という上場維持基準における課題も長年あるためMBO可能性のポイントは高いですね

本記事は特定の個別銘柄への投資勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任にて行ってください。掲載内容に基づく投資による損失等について、当ブログおよび筆者は一切の責任を負いかねます。

ABOUT ME
Panda(パンダ)
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公認会計士
監査法人出身の公認会計士。現在は一般事業会社の経理として実務に従事しながら、株式投資やインデックス投資なども実践中。 経理と会計士の視点から、MBO候補企業をゆっくり、でも深く掘り下げるブログを書いています。
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